所有者の親が認知症になっても自宅売却は可能?

近年、家を出て都会に居を構える若者が増えており、自宅を相続しても使い道がない、という方が多く見受けられます。
そのため親が同居や老人ホームへ移住するタイミングで、自宅を売却しておきたいという方も珍しくありません。

今回は、所有者の親が認知症である場合の自宅売却方法についてご説明します。

□所有者が認知症でも自宅売却可能なケース

基本的に、所有者が認知症になり十分な意思決定能力がないと判断された場合、所有者自身での売却が不可能になります。
また、意思決定能力のない所有者が同意を与えて、家族が代わりに売ることも認められません。

しかし、特定のケースに当てはまった場合のみ、所有者が認知症を患った場合でも不動産の売却が可能となります。

*認知症の度合い

認知症といっても、初期段階の軽度な認知症では意思決定能力が不十分であるとは限りません。
不動産売却では、所有者の本人確認や売却の意思確認を司法書士が行うこととされています。

人が判断するため、判断基準に若干の差異はありますが一般的に自分の氏名・住所・生年月日が言えて、「実家を売却する」という行為の意味することを理解していると確認できる場合、売却可能と判断されます。

□成年後見制度を利用した自宅売却方法

認知症により所有者本人の意思確認が認められなかった場合、「成年後見制度」を利用することで売却も含む様々な契約が行えるようになります。
成年後見制度は、以下の流れに則って進めましょう。

1.審判申し立て
所有者の住民票が登録されている地域の家庭裁判所へ、後見人制度の利用を申し立てます。

2.意思能力の確認
医師が不動産所有者のもとへ派遣され、認知症の状態・意思能力の有無を診察します。

3.後見人の選定
4親等内で、所有者の後見人となる人を選定します。
子どもや近くに住む親族がなることが一般的です。

4.査定・媒介契約
通常の不動産売却と同様に、不動産の査定や媒介契約を行います。

5.売買契約の締結
通常の売買契約に必要な書類に加えて、代理人の本人確認書類や所有者の確認書類も必要です。

6.家庭裁判所の許可受諾
売買契約成立後、取引を法的に認めてもらうため家庭裁判所の許可を得ます。

7.決済・引渡し
家庭裁判所の許可が出てから、不動産の決済と引渡しを行います。

□まとめ

今回は、不動産の所有者である親が認知症になった場合の自宅の売却は可能であるかや、代理人が売却する方法をご紹介しました。
後見人制度を利用して売却するには、通常の売却よりも手間がかかります。
そのため、事前に意思能力が認められるか診察しておくと、余計な手間をかけることが防げるでしょう。